2016年9月7日水曜日

【一橋ビジネスレビュー】 2016年度 Vol.64-No.2

2016年度<VOL.64 NO.2> 特集:新しい産業革命―デジタルが破壊する経営論理


















12・3・6・9月(年4回)刊編集
一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社



特集:
今、AI、IoT、FinTechなど、技術革新が新産業革命をもたらしつつある。また、クラウドソーシング、シェアリングエコノミー、ソーシャルメディアの進展が従来にない価値創造を可能にしつつある。産業の構造、企業の競争力、組織や個人の能力、人と機械の関係などが一変する時代において、それを捉える経済・経営の論理とはどのようなものか。全編にわたり、研究者と実務家の組み合わせによる論文で構成される本特集は、現象の最前線を捉える一方、これまでの経営論理を見直し、これからの経営実務への示唆を提示する。

特集論文Ⅰ プラットフォーム――新産業革命が変える企業価値
北川 寛樹/野間 幹晴
(PwCコンサルティング合同会社 ディレクター//一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授)
IoT、ビッグデータ、人工知能、クラウドなどのデジタル技術を活用した新産業革命が進みつつある。こうしたデジタル技術を活用した経営によって、企業価値あるいは企業の競争力の概念はどのように変わるのか。そして、産業のデジタル化に対応するには、どのような変革を行う必要があるのか。本論文は、過去10年間、日米で企業価値を大幅に高めた情報通信系成長企業4社と、大企業でデジタル技術を活用した2社を分析することで、こうした問いに対する1つの回答を提示する。その上で、デジタルの世界ではプラットフォームの構築をめぐる競争が進展すると同時に、企業が構築できる競争優位に変化が起きつつあると同時に、新たな形の投資家との対話が求められていることを指摘する。

特集論文Ⅱ 人工知能――非認知の知が拓く知識創造の最前線
一條 和生/久世 和資
 (一橋大学大学院国際企業戦略研究科長・教授/日本アイ・ビー・エム株式会社 研究開発担当執行役員)
デジタルテクノロジーや人工知能(AI)の急速な進化は、人間による知識創造活動に新たな問題と可能性を提示している。単純労働の分野では、AIによる人間労働の代替が進むと予測され、企業には「人間との共存」「人間とAIとが連携する新しい業務のあり方」の模索が求められている。しかし、AIの進化にもかかわらず、福澤諭吉いうところの大智、アリストテレスいうところのフロネーシス、つまり事柄の軽重大小を分別し、何を優先すべきかを時と場所とを察しつつ判断する人間の働きなくしては、AIを活用することはできない。また、デジタルテクノロジーやAIに代表される形式知への関心が高まるなかで、暗黙知や非合理性が人間の活動においては重要な役割を果たしていることを忘れてはならない。非認知的な知力と人間理解を広めることがAIの時代においても依然として知識創造のカギを握っている。AIは人間の判断や創造を代替するものではなく、人間の知識獲得をよりダイナミックに加速する手段と理解されなければならない。AIを人間の知識創造活動に活用することにより、そのスピードは加速し、精度も高まる。このような人間とAIとがコラボレーションした新しい知識創造が今、求められている。

特集論文Ⅲ クラウドソーシング――オンライン分散型資源を生かす価値共創マネジメント
澤谷 由里子/西山 浩平
(東京工科大学大学院コンピュータサイエンス学部アントレプレナー専攻教授/株式会社CUUSOO SYSTEM 代表取締役社長)
従来、イノベーションの源泉となる知識を創造する活動は、社内で行われるものとされていた。近年、産業構造の変化や問題の複雑化により、知識を求め、社外にゲートを開く必要性が論じられるようになってきた。デジタル化によって情報の取引コストが低減し、知識創造の場の組織外へのシフトを可能にするクラウドソーシングが出現した。本論文では、イノベーションの源泉となる暗黙知を顧客である消費者だけではなく、組織外の不特定多数の個人に求め、形式知化する場としてクラウドソーシングを活用することによって、より開かれた知識創造の可能性を示す。


特集論文Ⅳ 「デジタルマーケティング――マーケティングの民主化
高広 伯彦/藤川 佳則
(株式会社スケダチ 代表取締役社長/一橋大学大学院国際企業戦略研究科准教授)
デジタル技術の進展によって、マーケティングの主体が曖昧になる。売り手だけでなく買い手がその主体となる。商品やサービスを購買する段階だけでなく、購買前の「ZMOT(ゼロ番目の真実の瞬間)」の段階や、購買後の「UMOT(究極の真実の瞬間)」の段階など、購買プロセス全体を通じて、買い手は自らが持てる資源(知識や能力)を動員して、「情報の生産」や「情報の探索」など、さまざまな活動を担うようになる。企業組織に勤めるマーケティング担当者が主導する「売り手の、売り手のための、売り手による」マーケティング論理から、顧客が主導し組織の内外に遍在するさまざまな資源を動員する「買い手の、買い手のための、買い手による」マーケティング論理へ、マーケティングの民主化が進展する。


特集論文Ⅴ デジタルファブリケーション――設計しきら(れ)ない設計
水野 大二郎/渡辺 智暁
(慶應義塾大学環境情報学部准教授/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授)
インターネット前提社会におけるデジタルファブリケーション技術の普及によって、個人や非営利組織などのプレーヤーによる創造的活動は、これまで以上に自由に交換・共有・実践されつつある。そこではコミュニケーションの設計のみならず、コミュニケーションを動機づけ、可能とするための「設計の設計」の検討も必要となるだろう。そこで本論文は、技術進化に基づき出現した「ソーシャル」な共創領域における経済活動の変化を、製品、制度設計の観点から述べる。共創可能性を考えるために適当な事例や手法、それらを抽象的に吟味するための理論や背景について述べ、今後、企業は人間の創造性や共有資源に基づく社会的紐帯といった要素とどのようにつきあっていくのかについて検討することで、新たな価値を創出できることを論じる。

特集論文Ⅵ フィンテック――「私だけの金融サービス」時代の到来と意思決定プロセスの変革
土岐 大介/岡田 幸彦
(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社 代表取締役社長/筑波大学システム情報系准教授)
昨今話題のフィンテックは、単なるブームなのであろうか。フィンテックは、日本企業の経営論理にどのような影響を与えるのであろうか。フィンテックは、金融の機能を変革するのであろうか。フィンテックは、今後どのように発展していくのであろうか。私たちは、フィンテックをやみくもに受け入れて大丈夫なのであろうか。本論文は、これらの問いについて、俯瞰的かつ大局的な視点から考察している。筆者らの視座によると、フィンテックには3つの大きな流れが存在し、相互に密接に結びつきながら今後もさらに発展していくものと考えられる。特に第3世代のインタラクティブ・フィンテックについては、その本質や意義を見誤らずに、適切な対応を取っていく必要があるだろう。


[技術経営のリーダーたち]
[第28回]本質を捉えることで、事業の方向性が見えてくる 
藤原信也 (東洋紡株式会社 参与 機能膜事業総括部長兼アクア膜事業部長)
  インタビュアー:延岡健太郎・青島矢一


[経営を読み解くキーワード]
地域ブランド
髙橋 広行 (同志社大学商学部准教授)

[連載]無印良品の経営学
[第5回]世界の無印良品
西川 英彦(法政大学経営学部教授)

[ビジネス・ケース]
大戸屋――店内調理の海外展開
藤原 雅俊 (一橋大学大学院商学研究科准教授)
1958年に東京・池袋で個人経営の食堂として創業した大戸屋は、1980年代に入ると多店舗化を志向し、現在、国内300店舗を超える外食チェーンに成長している。2000年代には、アジアを中心に海外展開も積極的に進め、90店舗以上を出店している。大戸屋の特徴は、店内調理を事業コンセプトとして採用していることである。「家庭食の代行業」を標榜する大戸屋はセントラルキッチン方式をとらず、各店舗への依存度が高い店内調理にこだわり続けている。本ケースは、大戸屋が店内調理という事業コンセプトを海外に移管し、食材の調達から出店、従業員の教育を進めていく過程について、海外で同社が最も数多く出店しているタイ市場で起きたことを記したものである。

雪国まいたけ――同族企業におけるガバナンスと課題
河内山  拓磨/鈴木 智大 
(亜細亜大学経営学部専任講師/亜細亜大学経営学部准教授)
近年、コーポレートガバナンス改革への関心が高まっている。しかし、日本の上場企業は、所有と経営とが分離された大企業ばかりでなく、両者が高い程度で一致している同族企業も多く存在している。ここでは経営者・同族者の独善的な意思決定を抑止しづらいといった問題が生じるおそれがある。本ケースで分析する雪国まいたけは、創業者の強いリーダーシップの下、市場を創出し、30年にわたって牽引してきた企業である。しかし、2013年に不適切な会計処理が発覚し、経営者の交代劇を招くこととなる。資本市場からの規律づけが機能しないような場合、誰が責任を持って経営者に襟を正すよう求めるべきなのか。本ケースでは、同社の30年の歩みをたどりつつ、欧米型のガバナンス構造だけでは見落とされがちな日本企業のガバナンスのあり方について、示唆を得ることをねらいとする。


[連載]
ビジネスモデルを創造する発想法
[第1回]ビジネスモデルとは何か
井上 達彦 (早稲田大学商学学術院教授)

[マネジメント・フォーラム]
インタビュアー/米倉 誠一郎・野間 幹晴
既存のビジネスを再定義せよ。巨視的なアプローチこそが新しいダイナミズムを生み出す
宮田 拓弥 (スクラムベンチャーズ 創業者/ゼネラルパートナー)


[私のこの一冊]
■サラリーマンから大学教員に「とらばーゆ」した私の過去・現在・未来をつなぐ本――牧野智和『自己啓発の時代』
 常見 陽平 (千葉商科大学国際教養学部専任講師)

■旅の原点であり、表現の目標――沢木耕太郎『深夜特急』
 琴坂 将広 (慶應義塾大学総合政策学部准教授)



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