2016年12月7日水曜日

【一橋ビジネスレビュー】 2016年度 Vol.64-No.3

2016年度<VOL.64 NO.3> 特集:構造転換の全社戦略:抜本的改革のメカニズム

















12・3・6・9月(年4回)刊編集
一橋大学イノベーション研究センター
発行 東洋経済新報社



特集:
本特集では事業の組み替えを中心とした全社戦略を扱う。電機産業に顕著に見られた近年の日本企業の凋落の原因は、事業ポートフォリオやバリューチェーンの組み替えが、急速に変化した事業環境に追いつかなかったことにある。小手先の改革、事業戦略上の課題を解決するだけでなく、事業戦略を束ねる全社戦略にもっと注目する必要がある。企業はなぜ、環境変化に対応した構造転換ができないのか。特に、抜本的な改革をなぜタイムリーに進めることができないのか。その論理とメカニズムを明らかにし、問題を克服する方法を考えたい。

特集論文Ⅰ 事業立地の戦略論――最新形
三品 和広
(神戸大学大学院経営学研究科教授)
事業戦略の中核は「立地」の定義─「誰に向かって、何を売りに行くのか」にある。悪い立地を選んでしまえば、どんなにもがいても企業は収益力を飛躍的に上げることはできない。好立地を選んでも、時間が経てば劣化する。製品次元で難度の高いイノベーションに挑み、技術的には見事な成功を収めながら事業的には失敗に終わる事例が日本で相次いでいるのは、こうした事業立地次元の理由による。企業が存続するためには、劣化した立地からいかに脱出していくべきか。本論文では、著者の10年以上に及ぶ膨大なデータ分析に基づく研究成果を参照しながら、事業立地の概念および転換すべき構造を明らかにした上で、構造転換の処方箋を提供する。

特集論文Ⅱ 抜本的構造転換の企業戦略――大手電機メーカーの栄枯盛衰から学ぶ
佐藤 文昭
 (産業創成アドバイザリー 代表取締役)
筆者は、まさに日本の大手電機メーカーの栄枯盛衰を見てきた。衰退した根本的な原因は明らかである。構造的問題を抱えながら、変革を好まずリスクを取らずに先延ばしにしてきたからである。経営者だけでなく、社員も起業家精神を失い、サラリーマン化した大企業病に陥っている。日本社会全体も同じだが、変革よりも安定を望む。変革をして成功を遂げたモデルを、小さくても1つ1つ作っていき、大きな変革へ結びつけていくことが必要である。電機業界のなかには、性質がまったく異なる事業がある。変化が速くハイリスクで製品ライフサイクルが短い産業は、スピンアウトして企業カルチャーを全面的に変える必要がある。それが成功モデルになるように、今後も活動していきたい。

特集論文Ⅲ コーポレート・スピンオフを通じた事業構造の転換
吉村 典久
(和歌山大学経済学部教授)
日本企業の新規事業創造の歴史を俯瞰してみると、実に多くが親会社内の事業部門の分離独立、スピンオフを通じて生み出されていることがわかる。数多くの「子が親を超えた」事例を見いだせるのである。こうした新規事業の少なからずは、親会社の経営者なり本社が主導して戦略的に創造を試みたものではない。「周囲の反対を押し切って」といった形で、新規事業創造に強いコミットメントを持った者たちが主導した歴史がある。彼らが創造のエンジンとなったのである。そうした者たちが戦略的な自由度を持って創造を進めていく場として、スピンオフ企業が存在したのである。「非コア事業の切り捨て」のためのスピンオフではなく、将来の成長に向けてのスピンオフのあり方について論じていく。


特集論文Ⅳ 良い失敗とコミュニケーション――今、私たちが本当に考えなくてはならない戦略へのアプローチ
清水 勝彦
(慶應義塾大学大学院経営管理研究科教授)
インターネットをはじめとする技術の進化、グローバル化、そしてそれに伴う顧客行動の頻繁な変化など、今日の企業はより不確実な環境に対峙している。経営戦略の前提は、これまでのルールを所与として「フレームワーク」「分析」「計画」で対処することではなく、新たなルールを能動的に生み出す競争に勝つことと認識しなくてはならない。そのためには、自らの立ち位置と「強み(と基準)」を直視し、失敗を覚悟し、さらにはその失敗の共有を通じて戦略の立案と実行とに一体的に取り組まなくてはならない。本論文では、戦略に関する数多くの議論をたどりつつ、蔓延する認識のギャップに警鐘を鳴らし、企業が不確実性の高い環境で競争優位を築くために考えるべき視座とアプローチを提供する。


特別寄稿 知的機動力を錬磨する
野中 郁次郎
(一橋大学名誉教授)
企業は、直面する環境変化に対して、組織内外の知識を最大限に活用し、自らを変革しながらダイナミックにイノベーションを創出しなければな

らない。その組織的な動態能力が、本論文で定義する「知的機動力」である。これは、「共通善に向かって実践的な知を俊敏かつ弁証法的に創造、発展、共有、実践する能力」であり、知識創造理論をさらに発展させた考え方である。本論文では、ダイナミックケイパビリティーやオープンイノベーションと比較し、企業の事例を挙げながら、その基盤を構成する暗黙知、相互主観性、自律分散リーダーシップについて丁寧に説き明かしていく。

特別寄稿 アフリカから見たTICAD
廣木 重之
(駐南アフリカ共和国特命全権大使)
昨今話題のフィンテックは、単なるブームなのであろうか。フィンテックは、日本企業の経営論理にどのような影響を与えるのであろうか。フィンテックは、金融の機能を変革するのであろうか。フィンテックは、今後どのように発展していくのであろうか。私たちは、フィンテックをやみくもに受け入れて大丈夫なのであろうか。本論文は、これらの問いについて、俯瞰的かつ大局的な視点から考察している。筆者らの視座によると、フィンテックには3つの大きな流れが存在し、相互に密接に結びつきながら今後もさらに発展していくものと考えられる。特に第3世代のインタラクティブ・フィンテックについては、その本質や意義を見誤らずに、適切な対応を取っていく必要があるだろう。


[技術経営のリーダーたち]
[第29回]ヒューマン・オリエンテッドな車づくりをめざす 
藤原 清志 (マツダ株式会社 取締役専務執行役員 研究開発・MDI統括、コスト革新担当)
  インタビュアー:延岡健太郎・青島矢一
マツダが躍進し続けている。2017年3月期通期のグローバル販売台数は対前年1万6000台増の155万台、売上高は3兆1500億円、営業利益1500億円の見通しだという。小さな会社が生き残るすべとして、理想を追求した「スカイアクティブ」テクノロジーを搭載した車種が高い評価を受けている。それを生み出したマツダの取り組みとこれからを、全社的な商品戦略を構築し、牽引した専務執行役員の藤原清志氏に、ご自身の足跡に沿ってうかがった。


[経営を読み解くキーワード]
コーポレートガバナンス・コード
内田 大輔 (九州大学大学院経済学研究員講師)
2015年6月1日より、東京証券取引所(以下、東証)において、「コーポレートガバナンス・コード(以下、 CGコード)」が施行された。CGコードとは、会社と株主をはじめとする利害関係者が適切な関係を構築するための行動規範を指す。東証のCGコードは、5つの「基本原則」、その基本原則の内容を明確にするための30の「原則」および38の「補充原則」の計73項目から構成され、さまざまな施策が提示されている。


[連載]クリエイティビティの経営学
[第1回]ひらめきを生み出すのは「ワイガヤ」か、それとも「ひとりの時間」か
稲水 伸行(東京大学大学院経済学研究科准教授)
近年、経営学においてもクリエイティビティへの関心が高まっている。実は、筆者のもともとの研究関心はオフィス環境と職場組織および経営成果の関係にあったのだが、「クリエイティビティを育むオフィス環境はどのようなものか」という問いを企業の方からいただく機会が増えてきた。
そこで、本連載の第1回では、皆さんにとって身近なオフィス環境を1つの手掛かりとして、クリエイティビティについて考えていくことにしたい。

[連載]ビジネスモデルを創造する発想法
[第2回]良い模倣と悪い模倣
井上 達彦(早稲田大学商学学術院教授)
優れた企業家は、ビジネスモデルを創造するときに、どのようにアイディアを発想するのだろうか。新しいビジネスを何度も立ち上げている連続起業家(シリアルアントレプレナー)は、一般のビジネスパーソンとは発想の仕方が違うのだろうか。本連載では、ビジネスモデルを創造する発想法について探求していく。

[ビジネス・ケース]
東洋紡――抜本的企業改革の推進
藤原 雅俊/青島 矢一 
(一橋大学大学院商学研究科准教授/一橋大学イノベーション研究センター教授)
創立130周年となる2012年、東洋紡績は東洋紡へと社名を変更した。繊維事業からハイテク素材を中心とする事業構成への大胆な組み替えを遂げたことを受けた変更であった。繊維のコモディティ化と海外企業の攻勢に直面していた東洋紡にとって、「脱繊維」は半世紀にわたる課題であった。創業事業の大幅な縮小を伴う改革は、新規事業の拡大とともに、1990年後半から加速度的に進められた。それは、整理対象となる事業の担当者自らが改革に向けて社内説得を行うという、まさに「身を切る」形で進められた。その一方で経営者は、業績の見える化を徹底し赤字を削減するとともに、新規事業への重点的な資源配分を持続的に行ってきた。こうした努力の結果、伝統的な繊維事業の売上高が下がる一方で、それを補塡するかのように非繊維事業の売上高は高まり、名実ともにスペシャルティケミカル企業への変貌を遂げた。本ケースは、主力事業の低迷に直面した企業が、内部から自己変革を行う「日本型構造改革」ともいうべきプロセスを描く。

IBJ――「婚活」ブームと市場創造、ベンチャー企業による業界再興の軌跡
織田 由美子 
(一橋大学大学院商学研究科博士後期課程)
IBJは婚活サイト、婚活パーティー、結婚相談所といった婚活関連サービスにおいて日本最大の規模を誇る企業である。2000年創業の同社は、2007年の婚活ブーム以降、主要4事業すべてにおいて売り上げを伸ばし、全体としての売上高は2007年度の8500万円から2015年度には41億円へと急成長、2015年には東証1部への上場も達成した。しかしながら、こうしたブームは関連業界すべてに恩恵をもたらしたわけではない。婚活ブームは、パーティーやイベントなど、手軽で安価なサービスを拡大させた一方で、高額かつ月額制の結婚相談所においては、市場全体としては大きく伸びていないのが現状である。なぜ、後発で参入したIBJは、市場の流れに逆らって成長を続け、業界トップに君臨するまでに至ったのか。本ケースでは、その成長の軌跡について、関係各者へのインタビューなどをもとに明らかにしていく。


[マネジメント・フォーラム]
インタビュアー/米倉 誠一郎
「Magnify Life」というビジョンの下でまだ見ぬメガネの未来を考え抜く
田中 仁 (株式会社ジェイアイエヌ 代表取締役社長)


[私のこの一冊]
■構造改革を支える強靭な戦略思考――三枝匡『ザ・会社改造』
 青島 矢一 (一橋大学イノベーション研究センター教授)

■人生の転機に背中を押してくれた経済書――宮崎儀一『複合不況』
 佐藤 信雄 (ハーバード・ビジネススクール 日本リサーチ・センター長)



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